バイナンス、ビットコイン10億ドル購入 昨年10月の急落受け信頼回復狙う
暗号資産(仮想通貨)交換業者最大手のバイナンスは30日、ユーザー保護目的の基金「SAFU」を通じて10億ドル(約1500億円)相当のビットコイン(BTC)を購入したと発表した。保有するステーブルコインを振り替えた。2025年10月10日に発生した市場急落「フラッシュクラッシュ」以降、同社に対する投資家の不信感が強まっており、巨額の買い入れで市場の沈静化を図る。
市場混乱の端緒は昨年10月、トランプ米大統領が中国に対し100%の輸入関税を課すと表明したことだった。投資家の動揺からビットコインは一時14%下落。バイナンスでは一部の銘柄が一時99.99%安で取引されるなど、特定のプラットフォームに起因する価格乖離が鮮明となった。当時、バイナンス側が自己資本を用いて割安な価格で買い入れたとの観測も浮上したが、同社はこれを認めていない。
バイナンスは混乱後、清算の影響を受けた一部のユーザーに対し、補填や低金利融資など総額数億ドル規模の支援策を講じてきた。具体的には、ステーブルコイン「USDE」などを担保としていた利用者へ2億8300万ドルを支払ったほか、3億ドル相当の報酬引換券を提供した。しかし、業界全体で190億ドル規模に達した強制清算の被害に対し、同社の対応は極めて限定的だとの批判が根強い。
市場の先行きは依然として不透明だ。ビットコイン価格は現在8万3000ドル前後で推移しており、10月の急落直前の12万2000ドルから約32%低い水準にある。直近24時間の市場全体の取引高は800億ドルを超えており、今回の10億ドルの買い入れが相場に与える実質的な影響は限定的との見方が多い。
競合OKXのCEOは、10月の混乱によるバイナンスへの打撃を「深刻で永続的だ」と指摘する。投資家の一部は集団訴訟の準備を進めており、バイナンスの取引システムや透明性を巡る議論は今後も尾を引く見通しだ。価格の乱高下を招いたシステムの脆弱性が解消されない限り、投資家の信頼回復には時間を要するとみられる。